TOP > 一般外来の方 > 呼吸器外科の診療

呼吸器外科の診療

大阪大学呼吸器外科における臨床の特徴

(1)胸腔鏡下低侵襲手術

当科では、早期肺癌、転移性肺腫瘍、重症筋無力症、縦隔腫瘍を対象に、胸腔鏡下低侵襲手術を施行しています。

(2)拡大手術

呼吸器センター(呼吸器内科と共通病棟)で最新の集学的治療を行っています。また心臓血管外科をはじめとする他の外科領域と共同で手術を行うことが可能で、進行悪性腫瘍に対して積極的に切除を行っています。

(3)肺移植

当科は肺移植実施施設であり、これまで(2014年度まで)に計53例(脳死肺移植40例、生体肺葉移植11例、脳死心肺移植2例)の実績があります。

(4)最新の術前術後管

呼吸器センターにおいて、呼吸器内科、理学療法士、薬剤師、看護師とのチーム医療を実現し、最新の医療機器を用いた術前術後管理を行っています。

このページ上部へもどる

肺癌、転移性肺腫瘍

毎週開催される呼吸器内科・放射線科胸部グループとの合同カンファレンスで診断・治療方針を決定します。画像診断・手術・抗癌剤治療・放射線治療のエキスパートが検討することにより、個々の患者に最適の医療を提供します。

≪胸腔鏡下低侵襲手術≫

当科では、I期肺癌(リンパ節転移がない肺癌)や転移性肺腫瘍を対象に、胸腔鏡下低侵襲手術を施行しています。手術室に、高解像度モニターと”high-vision”内視鏡システム、さらに外科手術用3D内視鏡システムが導入されており、熟練した麻酔科医による左右分離換気下に行う完全胸腔鏡下肺切除術を第一選択とし、肺葉切除・肺区域切除・肺楔状切除を施行しています。リンパ節郭清も鏡視下の拡大された良好な視野で確実に行います。癌に対する肺葉切除・肺区域切除のうち、完全胸腔鏡下肺切除術は約80%です。皮膚切開は、前方腋窩に3-4cm、中腋窩線に1cm、肩甲骨下縁に1-2cmの3か所で、金属製開胸器を使用しないことで、従来の手術に比べ術後疼痛の軽減と早期離床に成功しました。また肺癌に対して、症例に応じて、より低侵襲ロボット支援手術(→ロボット手術の詳細はこちら)を行っています。

高解像度モニター、実際の手術創

近年、CT検診の普及やCT解像度の向上で早期肺癌の発見例が増えています。肺癌に対する標準術式は肺葉切除+縦隔リンパ節郭清ですが、当科では画像診断を中心とした臨床病理学的因子を十分に評価した上で、根治性を担保した肺機能温存を目的とした肺区域切除を積極的に行っています。肺は再生しない臓器ですので、私どもは患者のQOLを考慮し術式の個別化を進めています。当科では、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の参加施設であり、縮小手術に関する日本全国の臨床研究に携わっています。
 当科の基本方針として、下記のスケーマに則り、方針を決めています。

2cm以下の小型肺癌に対する術式選択

GGOとは、胸部の薄層CT検査で、背景にある血管や気管の構造を隠すことなく軽度の濃度の上昇がみられることをいう。 Solid lesionとは、背景の構造を隠してしまう濃度上昇のことです。また腫瘍マーカーであるCEAや胸膜浸潤(P-factor)を参考に、治療方針を決めています。
(Lobectomy:葉切除、Segmentectomy:区域切除、LN:リンパ節、Dissection:郭清=系統的にリンパ節を切除、Sampling:一部のリンパ節を摘出)

 転移性肺腫瘍には様々な原発腫瘍がありますが、他臓器に転移がないか、あるいは制御可能であることを確認し、肺機能と生活の質QOL(Quality of Life)の温存に注意しつつ、切除適応と術式の決定を行っています。近年、分子標的薬の開発や癌薬物療法の進歩に伴い、転移性肺腫瘍の切除という遠隔転移に対する局所療法の意義が再認識されてきています。

≪進行肺癌に対する拡大手術≫

大血管合併切除を行う手術の模式図肺門部肺癌や局所進行癌に対しては、癌の根治性を重視し開胸手術を行います。肺癌の治療は、切除により根治できる一部の早期癌を除き集学的治療multimodality therapyが原則ですので、抗癌剤治療・放射線治療を組み合わせて治療を行います。当院呼吸器センター(→呼吸器センターの詳細はこちら)において、呼吸器内科と共通病棟で診療を行っており、このような集学的治療をスムーズに行うことができます。また、大阪大学外科学講座内(→外科学講座HPはこちら)での連携によって、一般病院では切除が困難な肺癌の切除を積極的に行っています。

≪肺癌に対する当科の成績≫

当科の肺癌の手術成績は、5年生存率でみると進行度が1A期90%、1B期75%、2A期58%、2B期54%、3A期40%、3B期27%です。

平成26年度の肺癌手術の術式別の内訳 手術年齢の高齢化と大学病院としての性格上、心血管疾患、胃十二指腸疾患、肝臓病、糖尿病などいわゆる成人病を合併した肺癌、低肺機能症例などが増加しています。当院では、各科と連携して、大学病院として最新の医療を提供することができます。

≪肺癌の最新治療の開発をめざして≫

当科を中心として、非小細胞肺がん完全切除に対する周術期心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)投与の多施設共同無作為化比較試験(JANP study)を実施しています。本研究は、ANPによる血管保護作用による癌転移・術後再発抑制効果を肺癌手術に応用したものであり、全国500症例の肺癌症例を対象とした臨床研究であり、2015年9月1日より、症例登録が開始されています(→JANP studyの詳細はこちら)。

このページ上部へもどる

縦隔腫瘍

当院ではこれまでに国内で最も多くの胸腺腫瘍手術を行ってきました。教室として胸腺腫に関する系統的な基礎研究の成果を臨床応用し、多くの論文・学会報告をして参りました。1981年に教室の正岡昭がCancerに発表した「胸腺腫の正岡分類」は、30年を経た現在も臨床病期分類として国際標準であります。

正岡病期分類

胸腺腫は癌に比べて低悪性度であり、胸膜播種再発に対して積極的に切除を行うことにより長期生存が得られることもあります。手術のみならず、化学療法や放射線治療も含めて可能な限りの治療を行います。進行胸腺癌に対しては、術前に放射線化学療法を行った上で拡大手術を行っています。心臓血管外科との連携により、心大血管を合併切除することで、完全切除をめざします。
 胸腺腫に対する手術でも完全胸腔鏡下摘出術を第一選択としています。しかし、腫瘍径が5cmを超える大きい腫瘍や、周囲臓器への浸潤が疑われる症例では、根治性と安全性を担保するために開胸摘出術を躊躇しません。良性縦隔腫瘍(奇形腫、胸腺嚢胞、気管支嚢胞、神経原生腫瘍など)に対しても完全胸腔鏡下摘出術を第一選択とし低侵襲手術を遂行します。

胸骨吊り上げ法による胸腔鏡下胸腺腫瘍摘出術

また、縦隔腫瘍に対して、症例に応じて、より低侵襲ロボット支援手術(→ロボット手術の詳細はこちら)を行っています。

このページ上部へもどる

重症筋無力症

重症筋無力症は神経筋伝達物質であるアセチルコリンの受容体に対する自己抗体が作られることにより発症する自己免疫疾患です。本疾患の治療法のひとつに胸腺摘出術があります。胸腺腫の合併、60歳以下で全身症状を伴う、症状は軽度であるが抗アセチルコリン抗体陽性などはよい手術適応となります。教室の正岡昭は1981年に胸腺周囲脂肪組織も含めて広範に胸腺を摘除する「拡大胸腺摘出術」を提唱し、現在の標準術式となっています。胸腺摘出術の効果は術後3か月〜1年かけて徐々に出てきます。
 近年は、より低侵襲で、美容面を配慮した胸腔鏡下拡大胸腺摘出術を行っています。重症筋無力症の治療効果を十分得るためには胸腺周囲組織も含めた拡大胸腺摘出が必要で、当科では片側や胸骨剣状突起下からのアプローチよりも十分な視野が得られる両側胸腔鏡アプローチ(Video-assisted Extended Thymectomy)を採用しています。また、拡大胸腺摘出術に対しても、ロボット支援手術(→ロボット手術の詳細はこちら)を行っています。従来の胸骨正中切開に比べて、美容上のメリットだけでなく術後のクリーゼの発症もなく、呼吸管理などの点でも優れていると考えています。

胸腔鏡アプローチによる拡大胸腺摘出術、ロボット支援手術

手術成績は1年後に症状が消失する割合が40%、症状が改善する割合が40%で、合計すると約80%以上に手術の効果が認められています。しかし、約10%の症例で胸腺摘出術が奏効しない難治性症例が存在し、その場合にはサイクロスポリンやプログラフによる免疫抑制療法を行っており、良好な結果を得ています。また、当科では、これまでの多くの経験を生かし、神経内科と共同で、新たな治験薬の離床治験を積極的に取り入れています。

≪肺移植≫

肺移植は重症呼吸不全や肺高血圧症で他に有効な治療手段がなく生命の危険が迫っている患者さんに適応される治療法です。適応疾患は、肺高血圧症、肺線維症、肺気腫、気管支拡張症、肺リンパ脈管筋腫症、閉塞性細気管支炎などです。精密検査により肺移植適応評価を行い、院内および近畿肺移植検討会で審査し、さらに中央肺移植適応検討委員会で審査され、適応と判定された後に日本臓器移植ネットワークへ登録し移植待機となります。肺移植は手術関連死亡が10%程度の非常にリスクの高い治療ですが、順調な経過であれば日常生活や社会復帰が可能となります。本邦の脳死肺移植後の5年生存率は72.1%です(日本肺および心肺移植研究会Regstry Report 2015より)。
 現在は国内9施設で肺移植が行われていますが、当科は臓器移植法施行後、1例目の脳死肺移植を実施してから現在までに53例の肺移植を行ってきました。当科では、心臓血管外科との強い連携で、心疾患を合併する両肺移植を積極的に行っていることを特徴とし、他の肺移植実施施設からも、ご紹介を受けております。また当科は国内3施設しかない心肺同時移植施設で、これまでに2例の心肺同時移植を行いました。
 移植適応評価から移植手術までは、呼吸器センター(呼吸器内科、呼吸器外科、呼吸器リハビリチーム)で診療にあたります。移植手術後は、集中治療部・ICUと呼吸器センターが連携し、綿密な術後管理、リハビリテーションプログラムなどを通じて、術後早期回復をめざし退院まで包括的に移植患者さんの治療に当たっています。2010年7月の臓器移植法の改正により、家族の同意により脳死下臓器提供が可能になりました。これに伴い、国内の脳死肺移植手術数が増加しつつあります。

本邦1例目脳死肺移植
肺移植に関する相談は、
大阪大学医学部附属病院移植医療部までご連絡ください。

ホームページ:http://www.osaka-transplant.com/
TEL:06-6879-5053
E-mail:lung-tx@surg1.med.osaka-u.ac.jp

このページ上部へもどる

気胸

自然気胸は若年男性に多く、肺嚢胞が破裂し発症します。安静や胸腔ドレナージで治療されますが、再発率が非常に高く、CTで肺嚢胞が確認されれば胸腔鏡下肺嚢胞切除術の適応となります。小さな肺嚢胞では切除せずに、縫い縮めたり(縫縮)やレーザーによる焼灼処置で対応することもあります。いずれにしても、高解像度モニターと”high-vision”内視鏡システムを用いて、5mm−1cmの小さな創2-3か所で安全に手術が可能です。胸腔鏡手術後の再発率は3-7%です。
 一方、広い範囲に肺嚢胞が認める場合や高度な肺気腫のある高齢者の気胸は難治性であり、手術リスクが高く、手術適応は慎重を期す必要があります。手術でも嚢胞切除ではなく、嚢胞部分や破裂した部分を中心に特殊なシートを貼付し破裂した胸膜を補強し修復する場合もあります。また手術ではなく、胸膜癒着療法の適応になることもあります。

≪胸腔鏡下生検術≫

主病巣が肺癌や縦隔腫瘍のように胸腔内に限局しておらず、全身疾患でも胸腔内に病変を認めることがあります。そのような場合、血液検査や、画像検査などの負担の少ない検査で診断がつかないことがあり、確定診断目的に手術により、病変の一部を採取する必要があることがあります。手術は全身麻酔下にて胸腔鏡を用いた創部の小さい負担の少ない手術を行うことが多いですが、症例によっては通常の開胸手術にて診断することもあります。

≪気管ステント・気道異物除去≫

悪性腫瘍や感染、炎症、または気道異物などにより気道(気管・気管支)が狭窄し呼吸困難を来すような緊急対応を要する病態に対して、内腔を保持するために様々な材質の筒(ステント)を挿入して空気の通り道を確保する方法です。硬性鏡と呼ばれる特殊な器具を気管に挿入し(図)、麻酔科医師による適切な呼吸管理下に手術を行います。気道異物は長い鉗子を用いて異物を摘出し、気道を狭くする腫瘍があればレーザーで焼灼し除去した上で、細長い風船のようなもので(バルーン)で拡張し、ステントと呼ばれるパイプのようなものを挿入し狭窄を解除します。ステント挿入後は速やかに呼吸困難が改善します。
但し、特殊な治療法であるため症例の寄っては保険適用外で、自費診療になることもあります。

術前・ステント挿入後

また、当科では、硬性気管支鏡による気道拡張術も積極的に行っています。全身麻酔下に太い筒を気道に挿入して、様々な器具を用いて気道内の処置(手術)が可能であり、ほとんどの場合緊急的に行います。

硬性鏡を用いたステント留置

このページ上部へもどる

感染症

外科の対象となるのは、結核、非定型抗酸菌症、真菌症などで、抗菌薬治療で対処困難な難治性の慢性感染症になります。結核は当院での治療は行えませんので、疑われた場合や診断された場合には、適切に関連施設へ転院の上、治療を行っています。病態としては、肺に感染症が起こる肺炎、炎症性腫瘤、肺膿瘍、胸腔内に感染が起こる膿胸などがあります。また、高齢者をはじめとして、糖尿病や肝臓病、ステロイド投与や抗癌剤治療によって、手術後に組織修復が不良になり、気管支や肺の傷が治らずに感染を起こすことがあり、外科的治療の適応になります。
 治療法は、肺切除に加え、膿を外に出すために管を入れるドレナージが行われます。場合によっては、膿の排出をよくするために、全身麻酔下に胸腔鏡で感染部位を確認します。感染した膜や隔壁を除去し、良好にドレナージが行えるように工夫しており、早期治癒をめざします。さらに、慢性的な膿胸になり、感染が制御できない場合には、膿胸腔を開放し浄化を待つ開窓術を行っています。開窓術後は、ガーゼ交換を毎日行い、腔内の浄化を待ち、その後胸壁の筋肉を腔に充填することで腔を閉鎖します。肋骨を切除し、胸郭自体の形を変えて、腔を閉鎖することもあります。
 最近では、腔を縮小させるために、陰圧補助閉鎖治療システム(V.A.C. 、Vacuum Assisted Closure)を用いた、膿胸治療を行っております。V.A.Cは慢性、難治性の創傷の治療に用いられる技術であり、患部環境を被覆し管理された負圧を掛けることによって、慢性の局所創傷の治療を促進させるため、腔の早期の縮小を期待できます。

実際に行っている陰圧補助閉鎖治療システム(V.A.C.)療法
実際に行っている陰圧補助閉鎖治療システム(V.A.C.)療法

このページ上部へもどる

最新の術前術後管理

≪最新の胸腔ドレナージシステム≫

肺の術後には、肺の切離断端から空気が漏れるため、持続的に胸腔内から空気を吸い出す必要があります。手術の最後に胸の中にチューブを留置し、持続吸引器につないで、持続吸引器に接続します。当院では、デジタルモニターにより空気漏を定量化できる小型ポータブル持続吸引器(トパーズ®)を日本で初めて導入し、現在では標準で使用しています(病棟に7台常備)。従来の吸引器より軽量であり、術後の離床が促進され、術後合併症を減らすことができます。また、同時に入院期間の短縮につながります。

トパーズ®を装着した状態・左がトパーズ® 右が従来から使用している持続吸引器

≪周術期呼吸器リハビリテーション≫

阪大病院呼吸器センターでは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士から構成される、専属の呼吸器リハビリテーションチームを設置しており、合併症軽減と早期退院を目的とした、周術期呼吸器リハビリテーションを積極的に行っております。術前は患者さんの呼吸機能、運動能力を把握し、患者さん一人一人に適切な呼吸法や排痰法を指導しています。術後に酸素吸入が遷延したり、ADL低下患者さんに対しても、できる限り術前と同じ状態で退院していただけるよう、呼吸器リハビリを取り入れています。
 肺移植登録患者さんに対しては、移植待機中に可及的に体力・筋力を落とさないような運動法、呼吸負荷を軽減するような生活動作法などの指導を行い、術前から移植後早期回復を視野に入れた、呼吸器リハビリを行っております。術後は当院独自のリハビリテーション進行表に基づき、患者さんそれぞれの心肺・身体機能に応じた個別プログラムを作成し、退院後の生活を視野にいれた早期退院へ向けたリハビリを行っています。
また、院内だけの活動ではなく、阪大病院呼吸器センター主催の医療従事者向けの呼吸器リハビリテーション講習会も行っており、地域の医療施設に向けた情報発信も積極的に行っております。

呼吸器センターでのリハビリテーションの様子・北大阪呼吸リハビリテーション講習会

このページ上部へもどる