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悪性胸膜中皮腫に対するGEN0101療法

「化学療法抵抗性の悪性胸膜中皮腫患者を対象としたGEN0101胸膜腫瘍内投与、皮下投与による安全性/忍容性及び予備的な有効性検討のためのオープンラベル用量漸増試験(第1相)」についてのご説明

肺や心臓などの胸部の臓器や、胃腸・肝臓などの腹部の臓器は、それぞれ、胸膜、心膜、腹膜と呼ばれる膜に包まれ包まれています。この薄い膜には中皮細胞が並んでいます。胸膜の中皮細胞やその下部結合組織の間葉細胞から発生する癌を「悪性胸膜中皮腫」と言います。悪性胸膜中皮腫は胸膜に広がり、さらに周りの組織やリンパ節や他臓器に進展、転移していきます。
 悪性胸膜中皮腫の治療としては、手術療法、化学療法、放射線療法があります。手術は腫瘍の進展が一側の胸腔内に留まりリンパ節転移、遠隔転移を有さない早期症例が適応となりますが、腫瘍の性質上、完全切除は難しいのが現状です。手術が適用にならない場合は化学療法が行われ、シスプラチンとペメトレキセドの併用療法が標準治療として用いられています。しかし、これらの薬剤が無効であった場合の悪性胸膜中皮腫に対する二次治療は確立されていません。射線療法は手術療法と同様に適応は限定的です。このような現状で、有効な新規治療法の開発が切望されます。
 悪性胸膜中皮腫は、そのほとんどがアスベスト(石綿)を吸ったことにより発生します。アスベストを吸ってから悪性胸膜中皮腫が発生するまでの期間は平均40年とされています。今後、日本では2025年頃をピークに悪性胸膜中皮腫の患者さんが増加すると考えられています。治療の難しいこの疾患に有効な治療法を確立することは医学界の急務と言えます。
 大阪大学では、新たな癌治療の方法の開発を行っており、細胞融合をおこすウイルスのひとつであるセンダイウイルスを不活性化して作られたGEN0101による癌治療もその一つです。GEN0101は人体内でウイルスの再活性化や増殖をせず、免疫活性作用によりインターフェロンという物質の産生を通じて抗腫瘍効果を有する事が基礎的研究で明らかにされています。現在、悪性黒色腫と前立腺癌において研究が進められています。私たちはGEN0101を、その他の治療の難しい悪性腫瘍へ応用することを目指しております。そこで今回、悪性胸膜中皮腫に対しても安全で効果的な治療法を開発するためにGEN0101の研究を計画しました。この新治療の安全性と有効性を検証できればと考えています。
 今回は、標準治療が適用されない、又は化学療法剤による治療が無効の悪性胸膜中皮腫の患者さんにGEN0101の治験にご参加いただければと思います。悪性胸膜中皮腫に苦しむ患者さんたちのために役立てればと願っています。

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